人だかりをかき分けると手に昼食のパンを持っている羽間がいたので、わたしはその腕を掴む。

「え?」

「走って!」

 何がなんだか分からない羽間にそう伝えると、わたしはそのまま走り出した。

 羽間はつまずきそうになったが、すぐにわたしの後をついて来る。

 他の生徒もわたしたちの後を追いかけようとしたが、

「今わたしたちに近付いた奴は、ストーカーで訴えるから!」と脅してみると、追いかけるのを諦めてくれた。

 わたしはそのまま誰も使っていない空教室に入り、羽間が入ると同時に鍵を掛けた。

「これでよし」

「あの新田さん? これはいったい?」

「え? 昼食くらいゆっくり食べたいでしょ? あんたも苦労してると思ったから連れて来た」