「お前、何をしてるんだ。今すぐ立ち去れ!」

「……」

「おい、聞いているのか‼︎」

 壇先生が怒号を上げるが、次の瞬間に中川が壇先生の腹部に潜り込んだ。

 その数秒後、壇先生はその場に崩れ落ちた。

 グラウンドに横たわる壇先生の腹部は赤く滲んでいる。

 壇先生を見下ろしている中川の手も赤く染まり、持っていたサバイバルナイフに血が滴り落ちている。

「あ、嘘でしょ?」

「先生、刺されたの?」

「ヤバイじゃん、救急車と警察!」

 中川の行動にクラス全体がパニックになった。

 ある人は中川を凝視したまま固まり、ある人は走って教室を出て行った。

 恐怖と混乱が混じる教室の中、わたしはジッと中川を見ていて、どう動けばいいか分からなかった。

 中川は教室の悲鳴が聞こえたのか、壇先生に向けていた視線をこちらに向けた。

 かなり距離があるにもかかわらず、パチリと中川と目が合い、中川は憎悪のこもった目でわたしを睨む。