「侑莉、なんかつけてる? 甘い匂いがする」
「ママがくれた香水」

「その服もかわいいね、似合ってる」
「パパがくれたの」

こんな時間に、部屋着じゃなくて花柄のワンピースに香水なんて、臣が来るのを待ってたってバレバレだよね。

「髪も長くなったね。かわいい」


臣に見せたかったの。

臣にほめて欲しかったの。

臣に〝かわいい〟って言われたかったの。

臣はそれをぜんぶ、ちゃんと叶えてくれた。


だけどね、今はそれが全然うれしくないの。

いいんだよ? 無理しなくて。


「……ねえ臣」
「何?」

「臣って好きな子いるよね」
「……えっ!?」

臣がこんなに焦るなんて、めずらしい。

「急に何?」
「急なんかじゃないよ」

見ちゃったんだよ、わたし。

「いるでしょ?」
「……いるけど」

やっぱりね。

「耳まで真っ赤」
こんな臣、初めて見る。


「今年で最後にしよ? このお誕生日会」