腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

「……あぁ、分かった。あぁ……チッ、クソが…」


男は不機嫌そうに電話を切ると、私に向き直りドスの効いた声で脅すように言葉を発した。


「おい」


「っ、は、はい……?」


「俺は用が出来たんでここを離れる……が、間違ってもここを出ようなんて変な気は起こすんじゃねぇぞ。ここの鍵は俺が持ってんだ……分かったか?」


「…………」


「聞いてんのかゴラァ!!」



バコンッ!!と机を思い切り蹴り飛ばす男に、私は頭をコクコクと必死に動かした。

恐怖で震える私を一瞥すると、男は多目的室から早足で出て行った。
鍵はしっかりかけたようで、ガチャリと音が鳴りドアが開かない事をしきりに確認して、小走りでここを去って行った。


再び辺りに静けさが戻ってくる。

ドアに耳をくっ付けて、さっきの男が近くに居ないか確認してみる。
男はかなり急いでいたようで、既に4階には居ないようだった。