腹黒王子とめぐるの耽溺日誌

「う、腕時計……?」


「そうだ。お前の事だから腕時計の一つも持ってないだろ?だからプレゼントだ」



相変わらず機嫌が良さそうに話す隼瀬君。

確かに腕時計は持ってないけど、それにしたってなんで腕時計?
しかも、こんな高級そうな物。

受け取りづらいけど、拒否は出来ない雰囲気だ。



「き、気持ちは嬉しいけど……こんな高そうなの受け取るのはちょっと…」


「そんなどうでもいい事を気にするな。俺が受け取れと言ってるんだから受け取れ」



全く無茶言うよ。

やっぱり金持ちは金銭感覚がバグってるんだなぁと思いながら渋々時計を受け取る。

シンプルながらその重厚感のある見た目通り、腕時計にしてはちょっと重い方だと思う。

せっかく貰ったものなので腕時計につけて見せると、彼は満足そうに笑った。



「箔がついたな」


「そ、そうかなぁ…?なんだか着せられてる感があるような…」


「ずっと身につけていればいずれ馴染んでいくさ。高いからって家に置きっぱなしにするなよ」


「えー……」



箔が付くって言っても、学校でこんな腕時計を付けてくる方が浮いちゃう気がするんだけどなぁ。

まぁせっかくくれた物だし、学校に居る時は鞄にしまっておいて帰る時とかに付ければいっか。

隼瀬君に「ありがとう、ちゃんと着けるね」と言うと、ふん、と鼻を鳴らして微笑した。