席に戻ると、さっき私が日直であることを教えてくれた女の子が、不思議そうに聞く。
少し嫌な質問だな、とぼんやり思ってしまった。
そんな気持ちも一旦隠して、無難な回答を探す。


「多分。仲良い方ではあると思うよ」
「中学一緒だったんだよね?もしかして、好きだったりする?」
「まさかまさか、綺音イケメンじゃん。私なんかに釣り合わないもん」
「いや、そんなことないよ。釣り合うと思う」


にっこり笑う女の子。
この笑顔、私は知ってる。
妬みとか、嫉みとか、そのような類の。
やましい感情を隠す時の笑顔。


尾崎綺音は、とてもモテる。
かっこいいし、スポーツ万能だし、勉強もとてもできる方ではないけれど、欠点ではない。
中学の時から、付き合っている人がいようがいまいが関係なく、全力でモテていたし、告白もよくされていた。


だから、彼女が私に抱いている妬み嫉みはある程度、経験がある。
よくないことが起こることも。


取り繕わなくちゃ。
私は綺音が好きじゃないと、綺音が私に興味ないと、ちゃんと伝えなくちゃ。


考えれば考えるほど言葉に詰まるのは、今までお友達が多くなかった人間のサガなのだと思う。
真っ白な頭は、私の口から何かを発するために働いてくれることはなくて、女の子はつまらなさそうに前を向いた。


胸の奥がザワザワして、仕方ない。
どうしよう。
変な勘違い、されてないかな?