「秋野さん、今日日直じゃない?」
「あ!そうかも!」


隣の席の女の子の声に慌てて立ち上がる。
黒板、消さなきゃ。
数学の先生が、強い力で黒板を滑らせた赤い線は消えづらい。
背が高くて、お顔立ちの整った若い先生は、口数が少ないけど、生徒に親身になってくれるから、結構人気な先生。


でも私的には、身長が高いからか黒板の1番上まで手が届いてしまう佐伯先生は本当に憎くて仕方ない。ずるい。
私は黒板消しを伸ばしたって届かないのに。
世界はなんて不平等なんでしょう……。


背伸びしてみても1番上の文字は消えない。
自然にため息が漏れてしまったけど、私は気持ちを切り替えようと、椅子を取りに、振り返った。


目の前は壁だった。


「わっ」
「あ、びっくりした?届いてないから助けてあげよーかなあ、なんて」


私の背後、すぐ近くににっこり笑う、これまた高身長なイケメン。
尾崎綺音。



壁だと思ったのは制服だったみたい。
私なんかとは違って、高身長で黒板の1番上なんてよゆーで届いちゃう。ずるい。


「届いてないよ〜」
「うるさいなあ。私は綺音みたいに背高くないんだから」
「しょーがないなあ」