それでも、5分なんてあっという間。


「藍人、5分経ったよ」


藍人に声をかけると、藍人は眠たそうに体を起こす。


「んー……おはよ、莉良」


「おはよう、藍人。ほら、授業始まっちゃうよ。早く行こ」


「あー、よく寝た。やっぱり莉良の隣が一番落ち着く」


「落ち着く」……は喜んでいいのですか、神様。

私は藍人といると、落ち着くけどどこか落ち着かない。

それは、きっとこの気持ちの名前を知ってからだ。

すぐに動かない私を藍人が振り返る。


「莉良?」


「ううん、なんでもない。早く行こ!」


もうすぐ授業開始のチャイムが鳴る。

私達は、空き教室を後にした。