元奴隷の悪役令嬢は完璧お兄様に溺愛される


「あ、あの」
「オリバー殿下、その辺にしてくれますか。妹が痛がっています。第一、妹が手を差し伸べたにもかかわらず感謝もせずまず名前を尋ねるとはどういう了見ですか。……そもそも、わざとぶつかりましたね?」
「アンダーサン公爵の妹だったのか。なぜ僕が知らなかったんだろう。……本当に綺麗な子だ」
「その耳にはパンでも詰まっているのですか? もう一度言います。私の手が出る前にその手を妹から離してください」
「ひ……。わ、わかったよ……アンダーサン公爵……」

 ユリウスの怒気に負けたのか、オリバーがレインの手を解放する。レインの手は強く握られたせいで赤く手のあとがついてしまっていた。
 奴隷だった時は分厚くがさがさしていた手も、今はこんなにやわらかく、弱くなってしまった。

「レイン、手をお見せ。……ああ、赤くなっているじゃないか……」
「大丈夫です、お兄様」