なんだかんだと何処か胸にぽっかりと穴を開けたままの、大学四年生となった夏頃。
卒業が近付くに辺り、少し出遅れてはいたけれど、私はそのまま大学から徒歩圏内にある、会社へ就職しようと、就活活動を始めようとしていた。
そう…そのまま、帰らないと思っていたから。
でも、お母さんたっての希望で、どうしても地元での就職をせざるを得なくなり、渋々と言ってはなんだけれど、四年ぶりに地元に戻ることになった。
勿論、年に一度〜二度しか帰省しなかったのに、そんな私のことを責めることなく、温かく迎え入れてくれたお母さんには、今では感謝しかない。
それに、もう…きっと、彼への想いは風化して、薄っすらと積もった、雪の中に静かに撒いてきたつもりだ。
既に自分の中には、彼と自分の未来よりも、彼と誰かの幸せを願えられるまで、達観出来ていたと…そう、思っている。
それぐらい、この四年間で大人になったつもりで、彼への気持ちは落ち着いているはずだった。
そして、一月末の今日…。
雪の中を踏みしてる様にして、歩いていた。
強風に煽られて、チラチラと降りてくる粉雪を身にまといながら。
実家に戻る日にちは教えていたけれど、その時間は、お母さんへのサプライズとして、敢えて教えていなかった。
暫くぶりに、母娘水入らずでガールズトークをするのもありかな?とか、向こうでのスパルタだった大学生活とかなど、話に花を咲かせようと、そんな事を思いつつ、電車に揺られて疲れ顔のサラリーマンたちと共に帰路についた。
駅前は、沢山もの大小様々な足跡が、アスファルトに模様を付けていて、なんだかおかしくなってしまう。
本当にこんなに降ってしまったら、明日は色んなことが今日よりもっと大変だろうなぁなんて思いながら、私も転ばないよう気を付けながら歩いていた。
大学のあった地域では、雪なんて降ることはほぼなかったけど、ヒールを履いて帰って来なくて良かったと、我ながら自分を褒めた。
サク、サク
陽が落ちて行く前の、頼りない気配。
何処からか、夕飯の美味しそうな料理の香りが漂い、それがなんだかとても懐かしくて、私は微笑む。
柔いオレンジ掛かって来た空が、何故か目に痛くて、私は一瞬だけ目を閉じた。
「もう、こんな時間か…」
本当は、あまり帰りたくなくて、遠く遠く回り道をしていたのだけれど、それもそろそろ諦めなくてはならないと、腹を括る。
もう一度、腕時計をチラリと見てから、私はさっきより風が強まり、温度の下がった空気を肺いっぱいに吸い込み、足早に家へと向かうことを決めた。
卒業が近付くに辺り、少し出遅れてはいたけれど、私はそのまま大学から徒歩圏内にある、会社へ就職しようと、就活活動を始めようとしていた。
そう…そのまま、帰らないと思っていたから。
でも、お母さんたっての希望で、どうしても地元での就職をせざるを得なくなり、渋々と言ってはなんだけれど、四年ぶりに地元に戻ることになった。
勿論、年に一度〜二度しか帰省しなかったのに、そんな私のことを責めることなく、温かく迎え入れてくれたお母さんには、今では感謝しかない。
それに、もう…きっと、彼への想いは風化して、薄っすらと積もった、雪の中に静かに撒いてきたつもりだ。
既に自分の中には、彼と自分の未来よりも、彼と誰かの幸せを願えられるまで、達観出来ていたと…そう、思っている。
それぐらい、この四年間で大人になったつもりで、彼への気持ちは落ち着いているはずだった。
そして、一月末の今日…。
雪の中を踏みしてる様にして、歩いていた。
強風に煽られて、チラチラと降りてくる粉雪を身にまといながら。
実家に戻る日にちは教えていたけれど、その時間は、お母さんへのサプライズとして、敢えて教えていなかった。
暫くぶりに、母娘水入らずでガールズトークをするのもありかな?とか、向こうでのスパルタだった大学生活とかなど、話に花を咲かせようと、そんな事を思いつつ、電車に揺られて疲れ顔のサラリーマンたちと共に帰路についた。
駅前は、沢山もの大小様々な足跡が、アスファルトに模様を付けていて、なんだかおかしくなってしまう。
本当にこんなに降ってしまったら、明日は色んなことが今日よりもっと大変だろうなぁなんて思いながら、私も転ばないよう気を付けながら歩いていた。
大学のあった地域では、雪なんて降ることはほぼなかったけど、ヒールを履いて帰って来なくて良かったと、我ながら自分を褒めた。
サク、サク
陽が落ちて行く前の、頼りない気配。
何処からか、夕飯の美味しそうな料理の香りが漂い、それがなんだかとても懐かしくて、私は微笑む。
柔いオレンジ掛かって来た空が、何故か目に痛くて、私は一瞬だけ目を閉じた。
「もう、こんな時間か…」
本当は、あまり帰りたくなくて、遠く遠く回り道をしていたのだけれど、それもそろそろ諦めなくてはならないと、腹を括る。
もう一度、腕時計をチラリと見てから、私はさっきより風が強まり、温度の下がった空気を肺いっぱいに吸い込み、足早に家へと向かうことを決めた。



