幸せの欠片たち。

「…、も、あの頃の私じゃないよ?二十歳も超えたし、大人になったんだよ?…だから今更…今更昔のことで、えいちゃんのことを責めるつもりなんか、ないから…だいじょ、ぶ」 


伝えたいことは沢山あるのに、最後は声が震えて、小さな呟きとなってしまった。
ぽろ、と白くなるまで握り締めていた手に、涙が落ちる。
すると、彼は私のことをふわりと抱き締めるようにして、何処か焦ったように囁いて来た。


「泣くな…。泣くなよ…美南。お前に泣かれると、俺如何したらいいか分からなくなる…。それくらい、弱いんだって」


自分で大人になったと言いながら、泣くなんて卑怯だと思ったけれど、慈しむように見つめ続けてくる彼に負けて、気付けば涙がとめどなく溢れていた。

どうにか涙を止めようと、ごしごし擦ろうとすれば、その手を掴まれて、優しい手付きで彼の指が私の目元に溜まった涙を掬い取ってくれる。


「…えい、ちゃ…」


ごめんね、と…色々ごめんね、と言いたくて口を開けようと何度もするけど、一度堰を切ったように溢れ出した涙がそれを許さず、私は震える手できゅっと彼の着ている洋服の裾を掴んだ。


「…俺こそ、ごめんな。そんなにお前のこと傷付けてるとは思ってなくて。ただ、離れて行ってから、お前の存在がどれくらい俺の中で大きかったか、思い知らされて…なのに、勝手に拒否されたとか思ってて、ほんとごめんな」


きゅうっと、抱き締められること数分。
そのまま髪を梳かれていると、幾分か心が落ち着いてくる。