幸せの欠片たち。

そこにまた、ひょっこりとお母さんが顔を出してくる。


「美南〜?誰だったの、って!あら〜!詠太郎くんじゃないの!久しぶりねぇ〜!寒いでしょう
、ほらほら上がって頂戴。美南、部屋に入ってもらいなさいな。あんたの部屋さっきエアコン入れといたからね〜。詠太郎くんも遠慮なんかしなくていいのよー?」

本当に、女子校生並みにはしゃぐお母さんに頭が痛い。


普通、娘の部屋に異性を率先して入らせる?!
いくら、幼馴染だからって!
私達いい大人なのにっ!!!


と、にこにこ彼に笑い掛けているお母さんへと、これまたびっくりな一言が彼の口から出て来た。


「ありがとうございます、奈緒子さん。ほんの少しだけお邪魔します」


…え?
えいちゃんは、今なんと仰いました…?

てっきり断ると思ったのに。


「……本気…?」

「…駄目か?」


そんな大型犬が、きゅうんっと項垂れるような雰囲気を醸し出されたら、どうやったって駄目だよなんて言えないじゃん。
何時もはキリリッとしてて、そんなことしないくせに…何時の間にこんなにあざとくなったの、えいちゃん…。


私は逡巡してから、うー…と唸りつつ、彼を部屋に上げる決意をした。


「はい、どうぞ…えいちゃんも知っての通り、さっき帰って来たばっかだからさ、部屋汚いけど」

「そんなことねぇよ…。なんか、変わってないな…お前の部屋」

「えっ!?そんなことない!っていうか、えいちゃん、私の部屋にそんなに何度も来たことあったっけ?!」


動揺を抑えきれない私は、ついつい饒舌になってしまう。


そんな私に、ふっと柔らかい笑みを向けてきて、彼はずっと言葉数少なかった表情を崩した。


「来てただろ?子供ん時は」

「む。それは、子供の時の話でしょ!そんなのノーカン!」

「そうかぁー?俺は楽しかったけどな」

「ぐぬぬー…」


そんな顔をして、笑うなんて…狡いじゃないか。
ずっとずっと封印して来た…でも封印し切れなかった想いを、またぶつけてしまいそうになるじゃないか。


でも、そう思って唸っている私に対して、昔のように頭をぽんぽんと撫でる彼は、とても嬉しそうで。
私との思い出を純粋に懐かしんでみるみたいで、徐々に私も嬉しくなる。