「由季葉ちゃん?まだ起きているの?」
「あっ、そろそろ寝るよ」
「明日も学校でしょう?夜更かししすぎるのはダメよ」
「うん」
ドアの前、保母さんはそれだけ伝えて足音を消していった。
私の部屋はひとり部屋。
去年までは同室の子がいたけれど、高校を
卒業すると同時にひまわり園も卒業していった。
そのため、ベッドと勉強机はふたつずつ。
「ユキちゃん、起きてる?」
「…シロちゃん?」
寝ようとしたらしたで、コンコンと、小さな音。
返事をしながらドアを開けて、自然な流れで部屋に入れた。
「どうしたの?」
「…あのさ、」
さっきまで私が座っていた椅子にはシロちゃんが座って、どうしようかと迷った末の私はベッドの上に腰かけた。
なんだろう…、変に緊張する。
改めて部屋に来るだなんて、まるでみんなが寝静まった夜を狙っていたみたいに。
「僕、明日からしばらくここには帰らないから」
「……え?」
「だから佳祐兄ちゃんとか保母さんたちに、うまく誤魔化してくれない?」



