『ユキちゃん』



そのとき小さな男の子が、泣きわめく私の近くに寄ってきた。

“ユキちゃん”と、私に初めてのあだ名を付けながら。



『あたらしいぼくのかぞく?』


『…そうよ。由季葉ちゃん、この子は士郎(しろう)くん。由季葉ちゃんと同じ歳で、とっても優しい男の子なの』



しゃがんだ保母さんの腕のなか、その子は背伸びをするように覗き込んでくる。


女の子にも見えた男の子は、青色をした服がなんだか似合っていなくて。

変だなあって思ったんだ。


そんな私の小さな手を、また小さな手がぎゅっと握ってきた。



『ぼくはシロ、きみはユキ。あわせてフユに、なるんだよ』



空から白い天使が落ちてくる。

ふわふわとした雪が降る、寒い日だった。


でも心はふわりと温かかくて、気づけば保母さんの腕から降りてまでシロちゃんの手を握り返していたんだって。


それが、私たちが出会ったある日のこと。