「ばかだな、ほんと」



はあっと、いまだ残る熱を冷ますには足りないため息だった。


滴る汗。

渇ききった喉は、さっきまでお互いの名前を呼んでいたせいだ。



「なんでこっち選ぶかなあ」



覆い被さっていた影が離れると、20センチもないカーテンの隙間から月の光が彼を照らす。


そんなにも男の子だったんだ…。
知らないあいだに、男の子になっていた。


背中には引っ掻き跡。

抵抗した私のものなんか、きっと数えられるほど。


あとは本能に耐えるみたく、初めて味わった痛みと、消えてしまいそうな幸せを手繰り寄せるために付けてしまったものだろう。



「ばかだよ、ほんっとーに…」



どこか、震えていた。

どうしてそんなに泣きそうなの、シロちゃん。



「どうしても“かぞく”じゃいられなくなるほう、自ら選ぶとか」