「じゃー野田ちん頼むよー。誰か分かったら俺に教えて」


「ハイハイ。お前も色々頑張れよ」




野田に生暖かい目で見られながら、教室を後にする。

なんでもかんでも恋愛に絡めやがって。

俺は恋愛関係では無い男女の友情の方が神聖なものだと思うけどね。

そう思いながら夏秋の教室に向かう。

報告ついでに、あわよくば一緒に帰れたらいいなーなんて考えてるから、野田にあんなこと言われるのかもなー。




「おい」


「うわっ!!」



突然後ろから首根っこを思い切り引っ張られる。

勢いよく引っ張られたせいでバランスを崩しそうになるも、なんとか堪えて引っ張ったであろう奴の方に向き直る。



「……は?なんだ、元宮か……」



そこには、不愉快そうに顔を歪ませている元宮の姿があった。



「お前、どこに向かおうとしてたんだよ」


「どこって……どこでもいいだろ?それともお前、俺と一緒に帰りたかったのか?」


「ふざけんな…どうせお前のことだから、俺から柚月を奪うつもりだったんだろ?」




コイツ、なに気色悪いこと言ってやがる。

そもそも夏秋は元宮と付き合ってないし、夏秋は元宮の物じゃない。




「奪うってのは人聞きが悪いな。確かに俺は夏秋の所に行こうとしてたけど、お前にどう関係があんの?恋人同士でもないくせに」


「柚月は最近俺のことを避け始めた。てめぇが余計なこと言ったんだろ?」


「あらら、元宮ちゃん避けられてたの?かわいそー。俺は普通に夏秋と仲良くさせて貰ってたから気付かなかったわ」



そうやってわざと小馬鹿にしたように言うと、元宮は俺の胸倉を掴みあげて、憎悪の顔で俺を睨みつけた。



「調子乗ってんじゃねえぞ。アイツは俺のモノだ」


「離せよ、勘違い野郎。調子乗ってんのはてめぇだろ?キモいんだよ、言ってることが。だから避けられてんじゃねえの?」



負けじと俺も睨み返すと、俺達の険悪な様子に周りの奴らがザワザワと騒ぎ出した。


(面倒くさいな……)


変に目立って、この状況を夏秋や響子に知られるのも面倒だ。

俺は元宮に静かに「場所を変えるぞ」と伝えると、ギロリと俺を睨みつけながらも胸倉から手を離した。