「元宮君、分かったよ……ちょっと避けてたのは謝るけどさ、私にも色々事情があるんだよ」


「事情ってなんだよ」


「……うーん……」



その事情をペラペラと話せたらどれだけ楽か。

この期に及んでも、私には一応プライドがあったらしい。

元宮君と絡んでるせいで嫌がらせを受けてますって言うのは、なんとなく嫌で言えなかった。



「……お前、他に好きなやつが出来たんじゃないだろうな」


「……は?」


「他のやつの所に行ったら許さねぇから」




なに言ってんだこの人。

私がなにも答えられないでいると、なにを勘違いしたのかこんな事を言い出してる。

そもそも元宮君のモノじゃないし、こんなに私は悩んでるって言うのに、元凶の彼は自分勝手なことを言ってる。

ふつふつと怒りが湧いてきた。

私がこんな事で悩んでるのが馬鹿みたいじゃないか。



「……元宮君、私は君と付き合ってないよね。なんでそんな自分勝手なことばっかり言うの?」


「……なんだよ、悪いのかよ」


「悪いよ、だって迷惑だもん。私が誰を好きになろうが関係なくない?」



関係なくない?だって。

自分は響子ちゃんに言われて嫌だった事を、元宮君には言えちゃうんだ。

元宮君は、当然のように傷付いた顔をする。




「関係ある、俺と柚月はこれから付き合う事になるんだから」


「付き合わないって……だから、迷惑なんだって!」


「なんでだよ!!お前、どこにも行かないって言っただろ!!」



腕を強く引っ張られ、怒鳴りつけられる。

痛いぐらい強く私の腕を握りしめてるのに、彼を責める気にはなれなかった。

怒ってるのに、ずっと悲しそうな顔をしている。



「離してよ」


「嫌だ」


「離してって!!」




思い切り腕を振りほどいて、元宮君から逃げるようにその場から立ち去った。


元宮君の方は向かなかった。罪悪感が湧きそうだったから。