「じゃあ、俺こっちだから」



校門を出てしばらく歩くと、元宮が私の帰る方向とは反対の道を指さして言った。

コイツのことは気に入らなかったはずなのに、途中まで一緒に帰ってしまうなんて、自分でも意味が分からない。




「あっそ……さよなら」


「そう言えばお前、名前なんて言うんだよ」


「……言わないとダメ?」


「言ってくれないのか?」



キョトンとした顔で私を見るコイツに胸がザワザワとする。

本当になんなのコイツ。
コイツと話してると私のペースが乱される。



「多々良(たたら)、響子……」


「ふぅん。じゃあな、多々良」




自分から聞いてきたくせに、私の名前を聞いても
大した反応はしなかった。

元宮にとって、私は柚のおまけ程度でしかないって言うのがハッキリとわかる。

それならいっそ、ぞんざいに扱えば良いのに。


別れ際の元宮の笑った顔が、頭にこびりついて離れなかった。