廊下で話してると、周りの視線が気になってくる。

元宮をチラリと横で見て前を歩くと、元宮も自然と私の横に着いてくるような形で歩き始めた。



「……アンタが、なんでそんなに柚に執着するか分かんない」


「好きだから以外にあるか?」



大真面目な顔で当たり前のように言うもんだから、私がおかしいのかと思ってしまう。


なんで、そこまで異性を本気で好きになれるんだろう。

異性をそういう対象として見たことがない私からしたら、少し羨ましいくらいだ。



「…………そんなに好きなの、柚のこと」


「だから好きだって言ってんだろ……何回言わせんだよ」



何回も似たような質問をしてきたからか、元宮は少し恥ずかしそうにうつむきながら言った。



「他のやつにどう思われようが、柚月が好きだ。お前がどんなに俺を罵倒しようが、俺は柚月を諦めるつもりはねえよ」



さっきまでうつむいてたのに、今度は私の目を真っ直ぐ見て言い放った。

濁りのない綺麗な瞳に吸い込まれそうになる。

私は柚のために言ってるのに、コイツと話してると、自分がどうしようもなく嫌な奴なんじゃないかって思ってしまう。



「……あっそ……勝手にすれば?」


「元からそのつもりだけど」


「……アンタ、生意気……」




元宮は目を伏せてうっすらと笑みを浮かべる。

柚に向けるとろけた笑顔とは全然違う、"柚月じゃない人間"に向ける笑顔。


ほんの少しだけ、柚がズルいって思ってしまった自分が心底気持ち悪かった。