「あれ、草野じゃないじゃん」
「草野は昼休み柚月と多々良の三人で話し終わってんだよ」
「へー、そうなのか」
珍しくこいつより俺の方が柚月に詳しい状況に自然と口角が上がる。
俺達は裏庭の物陰に身を潜めて柚月と藍沢の成り行きを見ている。
「それじゃ、草野じゃ無かったって事なのか?」
「知らねぇ。でも、俺も正直草野じゃないとは思ってる」
「どうして?」
「お前が言ってた通りなら、犯人は"俺に気がある奴''なんだろ?草野は俺の事を嫌ってたからな」
それこそ、藍沢の方がよっぽど納得が出来る。
望月は俺を横目で見て「へぇ〜」と納得したんだか、してないんだか分からない態度をしている。
藍沢と柚月を見ていると、最初に口を開いたのはこの場に呼び出した柚月だった。
「……藍沢さん、貴女だよね?私に嫌がらせをしたの」
「……知らない……」
藍沢は地面を見ながら、小さな声でボソリと呟いた。
「あの女……っ!なにしらばっくれてやがる!」
「ちょっ、早いって!抑えろ、元宮〜!」
怒りでわなわなと震えていると、慌てたように望月が俺の身体を掴んだ。
(絶対に藍沢に決まってる!!)
よくよく考えればあの女は元から柚月の事を嫌ってる節があった。
俺に媚を売って、遠回しに柚月の株を下げようとしていたのを俺はしっかり覚えている。
しかも、この期に及んでまだ嫌がらせをしたのを認めようとしないなんて、なんて恥知らずな女なんだ!


