心臓がバクバクと言っている。


放課後。ガチガチになりながら三組の教室に向かう。
目当ては勿論藍沢さんだ。

三組の前に来て扉をゆっくりと開けると、そこには昼休み話した草野さんが立っていた。


「うわっ!く、草野さん……?」


「どうせ華と話しに来たんでしょ。多々良は?あの女が居ないなんてどーゆーこと?」


「あの女て……響子ちゃんは居ないよ、私一人で藍沢さんに話しにきたんだ」


「ふーん?」




見定めするような目で私を見たあと、草野さんは「華」と優しく藍沢さんの名前を呼んだ。

藍沢さんはビクリと怯えたような顔で私を見ると、草野さんの背に隠れた。

到底陰湿な嫌がらせをしたとは思えない立ち振る舞いだけど、私は喧嘩をしに来たわけじゃない。
冷静に息を吸い込み、咳払いをした。