最後の授業が皆終わり帰る支度をし始める。

響子ちゃんと他愛のない話をしながら帰る準備をしていると、ふとイケメン転校生の事を思い出してしまった。


さ、流石に大丈夫だよね?

てかちょっとからかっただけだよね??



高校になってからこういう風にからかわれたことが無いから色んな意味でドキドキしてる。

それにしても転校初日であんなことを冗談で言うのはちょっと感じ悪いよね。

いくらイケメンでも、そんな冗談言われて落ちるほど私も簡単な女じゃないもん。




「柚?」


「え?」


「だから、今日は委員会の集まりがあるから私は先行くね」


「あ、うん!またね響子ちゃん」


「うん。またね」



ニッコリと笑った顔は女神のように可愛い。

クラスの男子達も響子ちゃんの笑顔にはぽわ〜としてるみたいだ。



「私も早いとこ帰ろーっと」



廊下に出て念の為隣のクラスの様子を伺う。


よし!あの転校生は居ないみたいだ。





「おい」


「わっ!!!!」



いきなり声を掛けられたかと思うと、腕をガシッと掴まれる。

驚いて後ろを振り返ると、なんとあの転校生がムスッとした顔で私を見ているではないか。



「えっ!?えっっ!!!??」


「お前、さっきなんで逃げたんだよ」


「いや、えっとその……!!!」




顔がカッコよすぎる!!!

いくらからかって口説いてくるような性格の悪い男と言えど、顔はもうめちゃくちゃタイプ。

こんな近距離で私の顔を覗かれたら頭がパンクしてしまう……!



「しょしょしょ、初対面だから!ちょっと驚いてしまいまして…!」


「…………は?」




え、なんか言い方ミスったかな……

私の返答を聞いた転校生は表情が抜け落ちたようにポカーンとしていた。

でも実際初対面の異性にあんなこと言われて逃げない女の子は居ないと思う。



「と、とにかく、これで私は失礼します……」


「……待てよ、なんで俺から逃げようとすんの?」


「あぁぁ……ごめんなさいぃ……もう許してください……」



早歩きでその場を立ち去ろうとするも肩をガシッと掴まれる。

おそらく周りからしたらイケメンに絡まれる哀れな地味女といったように見えるだろう。


実際そうだし、周りも私達のやり取りにザワザワとしている。


転校生は周りの様子に「……チッ」と舌打ちをすると、私の手を引いて足早に校門へ向かった。




「あ、あのっ!」


「うるさい、お前は俺の言うこと聞いとけばいいんだよ」



自分勝手すぎるよ!!

自分勝手すぎるし、言ってることはめちゃくちゃだし、周りからは無駄に注目されるし災難すぎる…

でも、心の中でちょっとドキドキしてる自分もいる。