気が付くと目の前には涙を流している蒼。

どういう状況なのこれ!

とりあえず晴兄を呼びに行こうとすると、蒼に手を引かれた。



「待ってしろ……」

「えっ……」



こんな場面、どこかで見たことある。

蒼が県外の大学へ進学して、4年間家にいなかったとき。お盆やお正月に蒼が帰るとき、見送りにきた私にずっといてと言っていた。

それに、私が中学校最後の大会で負けて泣いていたときも、悠雅や晴兄はもちろんだけどいちばん寄り添ってくれた、心の支えだったのは蒼だ。

蒼のこと、他の二人とはちょっと違う……ように思ってたのかな?



「しろ、ごめんさっき記憶戻るかなって勝手にキスした」

「……えっ!?嘘でしょ!?」

「ほんとー」



え、え…………ん?

蒼が私にそんなことするわけない……はずなのに。

私もおかしいのかもしれない。なぜか蒼がしたことへの嫌悪感はない。