沖縄旅行から帰ってきた後、夏休みがない俺は毎日仕事が終わってからしろに話しかけていた。



「ただいまー、どうしろ、何か思い出した?」

「いや、ごめんなさい、まだよくわかりません……」

「そっ……か、いいんだよ急がなくても。ゆっくりでいいからね」



しろが好きだからこそ、無理はさせたくない。

あの日からずっと、俺の心の支えになってくれたから……。

六年前、しろと二人で遊園地に行った時のこと。

結局は俺が楽しすぎてしろを置いていくなんて最低行為をしたんだけど。それまで俺は心から楽しんだことがなかった。

学校のテストでちょっといい点を取っただけで、『将来有望』『天才』なんて言葉を並べられた俺は、中学でも高校でも窮屈な毎日を過ごしていた。

でも、しろといるときだけは違った。

どんなに嫌なことがあっても、イライラしてても、しろといれば気付けば笑顔になっている。妹だからとかいう理由じゃなく、しろを守りたいとも感じていた。