「真白、これ覚えてる?真白が歩けるようになって、初めて俺らみんなで遊びに行った時の写真なんだけど……」



首を振る真白。記憶ってのはなかなか戻らないものらしい。

家に帰ってから俺も晴兄も真白にいろいろなことを教え直してみたが、効果は現れなかった。

夏休みがない蒼は、家に帰ってきてから寝るまでずっと真白に話しかけている。



「ねぇ真白、俺たちが最初に喧嘩した時のこと話してあげるよ」

「……?」



それは、俺が四歳、真白が三歳だった時。

ほしいおもちゃの取り合い。喧嘩って言ってもそんな幼稚なものだったけど、お互い全然折れなくて、一か月も睨み合ったままだった。

当時十一歳だった蒼にお兄ちゃんなんだからと叱られ、俺がしぶしぶ謝りに行ったとき。

真白は俺におもちゃを譲った。

理由を聞くと、幼稚園の先生に大切な人には優しくしなさいと言われた真白は、お兄ちゃんは大切な人だからと俺に譲ることを決めたらしい。