すっかり安心している私だったが晴兄はそうでもないようで、ほとんど人が通らない(私は近道で通るけど)、階段のある通路にずるずると引き込まれた。



「ん?晴兄??」

「真白、どういうつもり?」

「…………っえ」



なんか晴兄……怒ってる?

いつもと違う声色に驚いていると、どんどん壁際に追い詰められて、身動きが取れなくなってしまった。



「真白は……俺の気持ちを無視して他の子とくっつけようとする悪い子なのかな?」

「え……ちが、そういうことじゃなくて、」



てか晴兄顔近い。いくら兄妹でもこの距離感はおかしいと思う。

なにかの衝撃が加わればキスしてしまいそうなほど近くにある晴兄の口からは、怒りと呆れの含まれた言葉が発せられる。



「だったら何?俺には真白しか見えてないんだから余計なことしないで」

「は、い……」

「わかったならよろしい。怒っちゃってごめんね、戻ろっか」



さっきまでの圧が嘘のようになくなって、頭も撫でられた。

なんだかんだ一番怖いのは晴兄かもしれない……。