魂だけとなった身で地上を彷徨っていたことを、和樹はよくよく覚えていた。
振り返れば随分と衝撃的な体験をしたものだと思う和樹だったが、それでも姪がすべてを投げ出して自分を生き返らせたことに比べれば、それはよく見知った故郷を旅するのと同じくらい新たな発見もなく、それ以上に意味のないことだった。
美しく育った姪がここまで自分を慕っていたことを和樹はちっとも知らなかった。
あどけない輪郭を備えた少女の中にいつから、どうしてこんなにも激しい想いが巣くっていたのだろう。
密やかに秘められていた女としての情念に驚かされるばかりだった。
姪は若い。
そして美しい。
この先どんな華やかな人生を謳歌したか知れない。
そのすべてが我がために失われた悲しさを、どう表わしたらいいのかわからない。
ただ一途な想いのためだけに、若く未来あるその人生を手放してしまうその透明で熱いなにかに、和樹は胸を揺さぶられずにはいられなかった。
蝉の鳴き声が高く、空には入道雲が流れている。
それから間もなく、美咲は目を覚ました。
慌てて声を上げたのは一週間付きっきり世話をしていた母美冬だった。
美冬の声に屋敷中から渡邊家の一族が集まって来た。その中に和樹の姿もあった。
この日の和樹は、彼が普段見せる様子とは違っていた。
人を押し退けて美咲の視界に自分を押し込むようにして割り込んだ。



