スカートの裾が翻るのも構わず、町を駆け抜けた。
普段めったに走ったりしない美咲の息はすぐに切れる。
途中すれ違った工夫らしき男たちの口笛が後ろから聞こえた。
太陽の照りつけが頭と背中にじりじりときて、首にじとっとした汗を感じる。
不快だ、すべてが。
だが、構っていられなかった。
苦しい息を堪えて町を外れの畔道にやって来る。
美咲は九つまでこの町にいた。
この辺りの田畑がこの畔道沿いの朧川から水を引いているのを知っている。
川はさほど広くないもないし、深くもない。
それでも橋渡しの少年は言ったではないか。川が必ず海に繋がっているように、どの川も天へと繋がっていると。
美咲は川辺にしゃがみこむと、通行約束手形を両手で握り締めて祈った。
「お願いです……!
お願い……、美咲をどうか叔父様に会わせて下さい。
この手形はどこからどこへでも叔父様を橋渡ししてくれるのでしょう?
お願いです。
お願いですから、叔父様をここへ連れて来て。
美咲のいるこの場所へ連れて来て……!」
必死に祈り続けた。
流れる涙を拭うことさえ知らずに祈り続けた。
「お願いです。
お願いです……!
美咲の叔父様に、和樹叔父様に会わせて下さい。
叔父様手形はここにあります。
それがだめなら、どうか美咲を叔父様のいる処へ連れて行って。
どうか、どうかお願いします……」



