【叔父様ノ覚エ書】~叔父様の書物をこっそりと読みましたら、叔父様が殺されたらしいとわかりました。お可哀想な叔父様。待っていてくださいね。美咲がきっと助けて差し上げます…~

 


 


 少し乘り出して川の底を見やつた。水はまるでサイダアのやうな水浅葱色で、小さな泡がこぽこぽと生まれては消へて行く。

 底は白い石が沈んでいて、處々にまあるい珠が轉(ころ)がつてゐた。見た感ぢだと野球の硬球球位のと、一囘り大きいもの、一囘り小さいものとがあつて、其々色附きの水晶や翡翠(ひすい)や黄滑石(おうかつせき)のやうに色取り取りだ。

 一つ一つ光を帯びてゐるかのやうに、水の中でもぼんやりと輝いてゐる。

 其んな美しい珠が無數(むすう)にある。

 まるで寶(ほう)石(せき)の川のやうだ。

 そつと水に手を浸すと、其の一つに手を伸ばしてみた。

 届かないだらうと思ひきや、水底は案外と淺いのか、手に薄綠色の半透明の珠が滑り込んで來た。

 大きさは片手で何とか持てる程の大きさで、見た目に反してびつくりする程重さがなかつた。

 完璧な球體は水と同じでひんやりとしてゐた。



「なかなか大きな珠が取れましたね」

「はあ……」



 川の先に顏を向けた儘、少年が説明した。



「でも色が薄い。其れは貴方がまだ死ぬべき人ではないからです。

 色の濃い珠は其の人生を果たした人のものです。

 其の内此處を通る誰かに拾はれて行くでせう。

 其の珠を持つて、天へと向かつて行くんですよ。

 そして着いた暁には、其の珠は渡し舟の代金として船頭に渡されます。

 そろそろ珠を川に戻して下さい。

 さうしないと夲當に死んだ人と見なされて了いますから」



 何時かまた此の薄綠の珠を此處で拾う日が來るのだらう。

 珠を水の中でそつと手放すと、ゆつくり沈んで川底に留まつた。

 離れて行く薄綠の珠を見詰め乍ら、賢治と忍さんのことを思つた。

 彼の二人も此の川で珠を拾つて天に向かつたのだらうか。



 舟が進むと、川の先に一艘の小舟が見へた。

 少年が其の舟に向かつて輕く手を上げる。



「彼れは水上商です。此の旅の記念に何かお求めになつたら如何です」