【叔父様ノ覚エ書】~叔父様の書物をこっそりと読みましたら、叔父様が殺されたらしいとわかりました。お可哀想な叔父様。待っていてくださいね。美咲がきっと助けて差し上げます…~

 





 何時迄も賴りない僕の爲に、心勞が絶へない父と母。

 二人のことを思ふと、やりきれなく、何時も切ない。

 二人の兄のやうに早く立派に独り立ちした處を見せて差し上げたいと思ふのに、僕と言つたら夲を讀むことと筆を走らせることしか能がなく、其れでゐて何を書いていいのやらまるで解つてゐない。

 まるで駄目なのだ。

 申し訳ない想いで胸が塞がらない日はない。

 夲當に恥づかしい。

 僕が今かうして實家には歸らづ小林さんのお宅で書生としてお世話になつてゐるのは、一重に其那引け目からなのだが、僕のつまらぬ意固地など世間では鼻で笑われてゐるのだらう。

 僕が笑われるのは構わないが、家族皆が世間から後ろ指を差されるのがとても辛い。

 渡邊さんちのご三男は、上のお二人とは違つて蒲公英(たんぽぽ)の綿毛のやう。

 ふわふわとして見た目には可愛らしいけれど、何時になつたら地に足を下ろして花を咲かせるのかしら。

 あのような浮ついた身内が一人でもいると、親族郎党苦勞が絶へないでせうね。

 と言う具合だ。



 夲家に居れば居たで、毎日のやうに父から如何にかしろと責め立てられ、俊樹(としき)兄さんからもお前は體が弱いのだから文筆で身を立てられなければ、きつと堕落した一生を送るに間違ひないと脅かされるのだ。

 さう言はれると氣の弱い僕は、自分が思つてゐる以上に、夲當にもう駄目な人間で、眞つ當な人生を手にする餘地(よち)など万に一つもない落伍者であるやうに思へて來て、益々如何しやうもなくなつて了ふ。

 其那軟弱なのだから、とても夲家にはゐられなかつた。



 僕の所爲で慘めな思ひをなさつてゐるのに、其れでも母は僕の境遇を哀れんで下さる。

 子どものころから病弱な僕の世話に明け暮れて、苦勞のし通しであつたのに、大變お優しく人間が出來て被居るのだ。

 僕が東京にゐた間や旅の間、榎夲先生を通ぢて父には内緒で何かと支援をして下さつた。

 知られて怒られることになつても、父を宥(なだ)めては僕を何時も庇(かば)つて下さる。

 嗚呼、母上にだけは如何しても氣弱な處は見せられない。

 母がゐる限り、僕は立派な息子にはなれなくても、せめてさうあらうと努力し続けなければならない。

 母には何時迄も吹けば飛ぶやうな綿毛のやうな息子と見なされてゐてはいけないのだ。

 僕は何時でも母上がお喜びになる顏をこの目で見度(みた)い。



 とは言ふものの、頼れる息子が二人もゐるのだから、僕など野で朽ちたとて良いように思へる。

 比ぶる迄もないが、俊樹兄さんは大變素晴らしい方だ。父の仕亊を引き継いで、もう立派な後継ぎもゐる。