【叔父様ノ覚エ書】~叔父様の書物をこっそりと読みましたら、叔父様が殺されたらしいとわかりました。お可哀想な叔父様。待っていてくださいね。美咲がきっと助けて差し上げます…~




 ――月刊洋風庭園。K市高岡邸 秋の庭。

 雑誌は西洋館に合う洋風の庭の作り方や植物の手入れ等を記事にしたものだつた。

 其の特集が、彼の高岡邸だと言ふ。

 さう言へば、琴乃さんが此のこと言つてゐたことを思ひ出す。彼れが此れなのだ。

 彼(か)物靜かな乙女を思ひ出し、約束を果たせなかつたことが申し訳なくて、心の中で謝つた。 

 嫌な豫感は、琴乃さんの想ひ出とは、全く毛色が違つてゐた。



 見覺へのある高岡邸の庭。

 秋が深まつてより鮮やかな色を捉へた最新式のグラビア印刷寫(しゃ)眞(しん)が、表紙を飾つてゐる。

 震える指で頁を捲る。

 様々に切り取られたモノクロ写真が載ってゐる。

 秋咲きの英國薔薇(イングリツシュロオズ)。

 郭香薊(かつこうあざみ)。

 石蕗(つわぶき)。

 どれも琴乃さんに敎へて貰つた花々だ。

 濃色の木の葉を散らす廣葉樹。

 輝くやうに聳(そび)へる銀杏。

 半分祈(いの)りのやうな想ひでだつた。

 しかし、僕は到頭見つけて了つた。

 薫子が立つてゐた彼の裏庭の一角。

 其の位置に、僕が毟り取つた彼の葉と同じの木があつた。

 説明書きからすると、其れは常綠の種で三月頃白い花が咲く、沈丁花(ぢんちょうげ)らしい。

 ほぼ球體(きゅうたい)に整へられた其の木の隣。

 彼の時にはなかつた木が其處にあつた。

 沈丁花は形を同じくして、二つ並んでゐた。