【叔父様ノ覚エ書】~叔父様の書物をこっそりと読みましたら、叔父様が殺されたらしいとわかりました。お可哀想な叔父様。待っていてくださいね。美咲がきっと助けて差し上げます…~





 寝轉がつてゐた僕は、遂に來たかと跳ね起きた。

 雨の中走つて來た男は錯亂した様子で喚き散らした。



「し、死んでる! 死んでる!

 キ、キキキヌタ様が逃げたつ!

 し、し、死體が境内に……!

 賢治の坊主が!」



 誰もが耳を疑つた。

 突如として村は騒然となつた。

 僕は賢治の家族や村人達と一緒に神?に向かつた。

 降りしきる雨の中、神社の境内は暴かれてゐた。

 其れは賢治と僕の計書通りだつた。

 しかし其の内(なか)は。…………



 其の光景を思ひ出すと今でも具合が惡くなる。

 賢治の母親は其の場に泣き崩れた。

 誰かが呟いた。


「キヌタ様が食つたんだ……」

「……何て酷い有様ぢゃ」

「此れからまた人食いキヌタの横暴が繰り返されると言ふのかい……嗚呼……」



 頭を毆(なぐ)られたやうな氣分だつた。

 惡い夢なら、覺めて呉れ。

 僕は人生で初めて心の底から唱へた。



 賢治の遺體は原形を留めてゐなかつた爲に、葬儀は簡素に其の日の内に行はれた。

 僕も其の參列者に加へて貰つた。

 計畫では境内が暴かれているのが發見された後、僕が二人を呼びに行く筈だつた墓場に、賢治は靜かに埋葬された。



 埋葬が終はつてから暫くの間、僕はぼんやりしてゐたらしい。

 氣が附くと村人達は踵を返して村へ戻り始めてゐた。

 僕も慌てて其れに倣ほうとした其の間、僕の眼の端は山林の墓場にそぐはぬ艷やかな色を捉へた。

 重ねられた華やかな着物。

 其處にゐたのは加奈……否、キヌタ様だつた。

 僕は射竦められたやうに動けなくなつた。

 村人を呼ばうにも聲が出ない。

 キヌタ様は艷つぽい笑みを浮かべ乍らこちらへ向つて來る。

 其の後ろには三人の見慣れぬ男が附いてゐる。

 其れも揃いも揃つて眞つ白い顏の美男ばかりだ。

 瞬間的に、彼れがキヌタ一族に違いないと悟つた。

 脚が竦んで動けない。村人達は氣附かないのだらうか。

 目を逸らした瞬間キヌタ一族が襲い掛かつてきさうで、焦る氣持ちとは裏腹に、村人達の方を振り向くことさへ出來なかつた。



「和樹さん」