良く晴れた初夏の日。 山裾のこの町は鳥の鳴き声が近い。 青々と茂るイチョウの葉が目に明るく、強めの風は碧色の息を吹いては縁側を突き抜けてゆく。 さもしげにうなじの辺りを通っては、後れ毛と一緒に汗を少し乾かしていく。 日蔭は幾許(いくばく)か涼しいのだが、それでも今日はちょっと暑過ぎる。 美咲は、ちっとも面白くない。 数えで十四歳になる渡邊美咲は、髪を娘風に編み込んで結い上げ、物憂げに頭を擡(もた)げている。