何度となくそのときのことを振り返ってみたが、どうして叔父がそんな事をしたのか分からない。
叔父は明るい目をしていた。
美咲の執心を知っていてからかったのだろうか。
容姿に恵まれてはいたが、意志薄弱と兄たちへの劣等感のせいか叔父がプレイボウイだったという記憶はない。
何度思い返してみてもわからない。
わからないが、そのとき寒くてよかったと思う。
どんなに顔や耳が赤くても、不自然ではなかったから。
同じ血族同士、美咲と和樹が結ばれることはない。
そんなことは知っている。
ませた子供だと思われるのが美咲は無性に嫌だった。
そんなのはいやらしい。
可愛くない。
単なる親しい姪と叔父のままでいたい。
腕の中で包まれるように大切にされるのは、姪であるからなのだ。
悟られるにはあまりに恥ずかしく、苛立たしかった。
それでも美咲の身体を抱いていた和樹叔父の腕は、美咲の速くなった胸の鼓動を感じていたかも知れない。
あの時どれほど美咲が耳を熱くしていたかを、和樹は知っていたかもしれない。
そう思い返すと、叔父のいないその部屋で美咲は一人頬を赤らめてしまう。
埃っぽいこの部屋で美咲を見ているものなど一つもないのに、そんな想い出に耽(ふけ)る美咲には、なんとなく居住まいが悪かった。
さらに言えば誰に見られたところで美咲の想いなどなにもわかりっこないのに、年頃の娘が持つ特有の自意識が羞恥(しゅうち)を激しく掻き立てる。
美咲は手をやっては頬に残った涙と火照りを抑えた。
指に伝わる温度はもはや熱病ではないかと自分でさえもびっくりするほどに熱かった。
ふと、美咲の肘が不注意に冊子の一山を突いてしまった。
あっと思った瞬間、埃がもうもうと舞い上がった。見る間に原稿用紙やらノオトやらが崩れて広がった。
想い出から引き戻されて、慌ててそれらを拾い集めだした。
――嗚呼、美咲はなにをしてるのかしら……。
自分を俯瞰(ふかん)してみてまた恥じる。
ばさばさと埃を立てながら原稿やらノオトやらを集めている内に、美咲の目に気になるものが留まった。
一冊のノオトだった。
手に取った時、美咲の胸はどきんとする。



