声が震える。聞いたことがないと思っていた男の声は、優しさを含んだ甘い声になると、聞き慣れた愛しい人の声と重なった。

 筋肉質で引き締まった体に高い背丈で、雰囲気がまったく異なっているけれど、整った秀麗な面立ちは見覚えがある。

 八年が経ち、驚くほど変わった彼に気がつかなかった。

「雲朔……?」

 戸惑いながら尋ねると、男は顔をくしゃっとさせて優しい笑顔を向けた。

「そうだよ、華蓮。ずっと会いたかった」

「嘘……本当に? 本当に雲朔なの?」

 雲朔の顔を撫でまわして、本当に実態があるのか確認する。

 彼に触れた指先が震えていた。涙が溢れてきて、全身が喜びに震えている。

怖いとか憎いとか、そういう気持ちは吹っ飛んでしまった。代わりに胸を締めつけるような愛おしさが込み上げる。

「幽霊じゃないわよね?」

「死んでないよ」

 雲朔の困ったような笑い顔を見て、間違いなく雲朔だと思った。

 雲朔はいつもこうして私を受け入れてくれた。

「雲朔! 雲朔!」

 何度も名を呼びながら雲朔に抱きつく。

 もう二度と会えないと思っていた。死んだものと思っていた。

 会いたかった。ずっと、寂しかった。

 胸が締め付けられて苦しいけれど、喜びの涙がとめどなく溢れてくる。

抱きしめた腕に力を込めると、雲朔も全てを受け入れるように抱きしめ返した。