「ありがとう」


 どっちも可愛いけど。せっかくだし、今日の思い出として一堂くんも持っていてくれたら……なんて。


 そう思うのとほぼ同時に、言葉が口をついて出ていた。


「良かったら、ひとつは一堂くんが貰ってくれない?」

「俺は、依茉のためにやっただけで。景品が欲しかったわけでは……」

「でも、取ったのは一堂くんだし。今日の記念だと思って。ね?」

「うん。そうだね……よく見ると可愛いな、こいつ」


 マスコットを受け取ると、一堂くんは小さく笑いながらネコの頭をつついた。


「俺、せっかくだからこのキーホルダー、スマホにつけようかな」

「あっ。わたしも」


 わたしたちは、さっそくスマホにネコのマスコットキーホルダーをつける。


 そしてわたしと一堂くんは、キーホルダーのついたスマホを掲げてみせる。


 それぞれのスマホからぶら下がる、ピンクの服を着た白ネコと水色の服を着た黒ネコは、カップルのようにも見える。


 スマホで調べてみたら、このネコたちは本当にカップルらしく。


 わたしと一堂くんもこの子たちのように、本当のカップルだったら良かったな……と、色違いのネコを見ながらわたしは、ふとそんなことを思った。