「そっか、じゃあその辺りからだな」


 そうして紅茶を一口飲んだ笙さんは話し始めた。


「まあ管理っつっても、基本的には保管するだけだな。SudRosaは啼勾会(なこうかい)っていう組織に属するチームで、Nの流通とかには関与してねぇから」

「啼勾会……」


 初めて聞く組織の名前に、それは私が聞いて良いことなのかな? って不安になる。

 でも、さっき陽が江島に対して『会長に潰されてぇの?』って言ってたのは、その啼勾会の会長にってことだったんだなって理解した。


「でも今回みたいに俺たちの目をかいくぐって横流ししたり盗んだりする奴がたまにいる。そういう連中にあんたが利用される可能性もあるからな、気をつけてくれ」

「は、はい」


 どう利用されるのかなんて分からなかったけれど、笙さんが真面目な顔で言うので私は素直に頷いた。


「あと、話は少し変わるけどな……啼勾会からの指示で数年前からちょっとある女を探してるんだ」

「は、はぁ……」


 Nの話から突然探し人の話になってちょっと困惑する。

 その話は私に何か関係あるのかな?


「その女はちょっと啼勾会にとって重要なものを持ってるらしくてさ。薔薇姫って呼んでるんだけど、あんた見たことねぇか?」


 不思議に思ったけれど、問われたことでただ情報が欲しかっただけみたいだと理解する。

 Nに関する話題よりは気が楽になって、私は口の中を潤すつもりで紅茶のティーカップを手に取った。

 でも、続いた笙さんの言葉に持ち上げたティーカップをピタリと止める。


「桃色の髪の女なんだけど」

「っ」


 瞬時に言葉と息を詰まらせた私は、口の中がカラカラに乾いていくのを感じた。