まだ話すつもりはなかったけれど、もうストロベリーブロンドの髪は見られちゃったんだから説明するしかないだろう。

 私は黒髪のウィッグをつけながら、簡単に幼い頃のことを話した。


「この髪珍しいでしょ? そのせいか小さい頃人さらいに遭いかけてね」

「だから隠してるってワケ?」

「うん。陽とお養母さんにはいずれ話そうと思ってたんだけど……」

「ふーん……」


 素っ気なく相槌を打った陽は、そのまま何かを考えるように黙ってしまった。

 でも、準備を終えて部屋を出ようとしたとき、頭を軽くポンと叩かれる。


「……ま、とにかく外ではウィッグ外さないようにするのは俺も賛成」

「え? あ、うん」


 とりあえず理解を示してくれて良かったと思う。

 変に言いふらされたら困るからね。

 ただ、黙り込んでいた間なにを考えていたのかとか、どうしてそんなに真剣な顔で言うのかが少し疑問だったけれど。


 部屋を出た私は、ここって結構立派なホテルなんだなと見回しながら思った。

 南香街の立ち入り禁止区域だっていうのに、こんなしっかりとしたホテルがあるなんて。


「……あれ?」


 キョロキョロとホテル内を見ていた私は、ふと既視感を覚える。

 どうしてかこのホテルに見覚えがあった。

 こんなところ、来たことなんてないよね?

 疑問に首を傾げながら、私は陽について行って南香街を後にした。