惑わし総長の甘美な香りに溺れて

「さぁ、わかんねぇ」

「は?」


 つき合おうと言うからには恋愛感情があるんだと思っていたけれど、まさか『わからない』なんて答えが返ってくるとは思わなかった。


「モモ、良い匂いするし。かわいいし、キレイだし……俺のものにしたいって独占欲はあるよ?」


 話しながらまた肉食獣のような男の目をした陽に、私は思わずゴクリと生唾を飲み込んだ。

 私の全てを欲しいと、そう思っているのは嫌でもわかったから。

 まさしく肉食獣の獲物になったような気分で、心臓がドクドクと大きく鳴る。

 そんな私の警戒心を解くように、陽はニカッと明るい笑顔になって続きを語った。


「でもさ、これが恋愛感情の好きなのかはよくわかんないんだよな。だからつき合ってみて確かめるってのもいいんじゃねぇ?」

「確かめる……?」

「そ。恋人になってみて、これが恋愛感情かどうか確かめるってこと」


 人なつっこいいつもの陽の笑みに、まんまと警戒心を解いてしまった私はその提案が悪くないものに思えた。

 実際、私自身も陽を異性として好きなのかちゃんとわかっていなかったから。

 義弟として、家族としては好きだと思う。

 危険な陽も知って、まだ戸惑いはあるけれどやっぱり嫌いだとは思えないし。


 でも、これが恋愛感情なのかどうかは私もわからなかった。