惑わし総長の甘美な香りに溺れて

 さっき、私の体をたくさん触ってきた陽だけれど、唇へのキスはしてこなかった。

 唇以外にはたくさんしてきたのに。


 どうしてかなって思ってたけれど、今はキスしようとしてる。

 それがなんだか、求められているような気がして……。

 私が欲しいんだって言われてるような気がして……。


 だから、受け入れるつもりで陽の唇が触れるのを待っていた――のだけど。


 がぶっ


「いたっ!」


 は、鼻? 鼻噛まれた!?


「ったく、抵抗しろよ。ホントに抱くぞ?」

「そ、それは……」


 実は抱かれてもいいと思ったなんて言えず言葉に詰まる。

 かわいい陽も危険な陽も、どっちも嫌いじゃなくて……本気で求めてくれてるってことだけはわかったから、いいかなって。


 ……って、私結構とんでもないこと思ってた?

 陽は義弟なのに、体の関係を持つとか!


 今更ながら悪いことをしようとしていた気持ちになって、焦りとか羞恥がぐるぐると混ざり合う。


 きっと色々なことがありすぎて理性が働かなかったからだよね。

 そうそう、冷静になればちゃんとダメだって断れるはず。


 何とか強引に理性を働かせて落ち着きを取り戻そうとしていたのに、陽はまた私の心をかき乱すようなことを口にした。