惑わし総長の甘美な香りに溺れて

「ああ? なんだ?」

「ん? こいつ編入生じゃねぇ? なんでこんなとこにいるんだよ」

「ああ、そういえばこいつと姉弟なんだっけ? 一緒に来たのか?」

「は? 一緒にって……モモ?」


 うまく動かせない身体でなんとか声の方を見ると、スーツ姿の陽が驚いた顔をして私を見ていた。

 その顔は少し幼く見えて、いつもの陽だって思ったらさっきの胸騒ぎはなくなった――と、思ったのに。


「マジかよ……もう少しかわいい義弟で通したかったんだけどな」


 皮肉げな笑みを浮かべて歪んだ顔は、私の知っている陽じゃなかった。


「とにかく今はお前らだ。SudRosa(スドローザ)の管理する土地への無断侵入、そしてNを盗み出したのはお前らだろ?」


 意識を私から不良たちに戻し、陽は昏い笑みを浮かべる。

 その瞬間、空気が変わった。

 ピリッとした、緊迫感のある空気。

 ずっとニヤニヤと笑っていた不良たちの顔からも、笑みが消えた。


「そーゆーコト言うってことは……お前SudRosaの人間か?」

「……」


 健太の問いに陽は答えない。

 ただゴミでも見るような無感情な目を向けている。


 ……SudRosaって、何? 何かのグループ名?


 疑問は浮かぶけれど、熱が治まった訳じゃないから思考がまとまらない。

 ただ疑問だけが募る。