惑わし総長の甘美な香りに溺れて

 まるで検分するみたいに、ジロジロと見てから私の(あご)をつかんで上げる。

 触れてくる指に、身を(よじ)りたくなるような感覚がする。


 本当に、どうなっちゃったの私!?


「いい感じにとろけた顔してんじゃん。……てか、よく見たらかわいい顔してんじゃねぇ? こいつ」

「んー? お、ホントだな。ハズレかと思ったけどこれなら楽しめそうだ」

「いいじゃん、興奮してきた! 早くホテルの中戻ろうぜ」


 彼らの会話が何を意味するのか、流石に分かった。

 自分の状態を考えても、嗅がされたのは……。


「おら! 立てよ!」

「もう引きずった方早くね? 力入んないみたいだしさ」


 片腕をつかまれて引き上げられても、うまく立つことが出来ない。

 するともう片方の腕もつかまれて、まるで連行されるように運ばれた。

 このままこいつらの好きなようにされちゃうのかな?


 やだ……嫌だよ。

 辛くて、悔しくて、涙がにじむ。


「は、る……」


 届かないと分かっていても、助けを求めてもう一度陽の名前を呼んだ。



「……おまえら、何してんの?」


 そこに、第三者の声が響く。

 私たち以外に人がいないんじゃないかと思うような静かな街中に、彼の声はとても良く通った。

 聞き慣れた声にホッとしたけれど、いつもより低く聞こえるそれにどこか胸が騒いだ。