惑わし総長の甘美な香りに溺れて

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 ――南香街。

 このみすず市にある繁華街の名前。

 元は大きな研究施設を中心に栄えた街だったと聞いたことがあるけれど、今ではその付近は封鎖されてしまっている。


 そして、そういう封鎖された場所は不良とかガラの悪い人たちに色々と都合が良いらしい。

 いつの間にか悪そうな人たちが集まるようになって、南香街そのものも安全な街とは言えなくなっていた。


 そんな危険な街だけれど、逆にスリルがあるとかで出入りする学生もいる。

 ブランド店や、有名な店もあるからなおさら異様な憧れとなってしまってるのかもしれない。

 加藤くんも悪友に連れて来られて、南香街の危険な魅力に取り付かれてしまったのかな?

 だとしても、景子という彼女がいるのに他の女の子と親しくするのはどうかと思う。


「……尾行、バレてないかな?」

「多分、大丈夫」


 悪友と一緒に街へ向かった久斗くんを追って、私と景子は南香街に足を踏み入れた。

 つけているのがバレないようにと身を潜めながら進んでいるけど……。

 これ、端から見てたら絶対怪しいよねって思う。

 でもまあ加藤くんたちにバレなきゃいいんだし、今は周りの目は気にしないでおこう。

 そう思いながら進んでいくと、街の中央にある広場へ着く。

 加藤くんと悪友たちはそこでいったん別行動を取るみたいだった。