景子を裏切ってないよね?


 一番聞きたいのはそれだけれど、いつもと変わらない様子の加藤くんはちゃんと景子を気遣っているように見える。

 そんな、はなから疑っているような質問は出来なかった。


「あ、ごめん。何でもない」


 笑って誤魔化して、聞きたかった質問は呑み込んだ。

 もう少しだけ様子を見よう。

 もしかしたら景子の考えすぎで、浮気なんて全くしてないかもしれないし。

 そうだとしたら第三者の私が出しゃばったら変にこじれちゃう。


「そ? じゃあ、俺朝の準備あるから」

「うん」


 そうして加藤くんが私のそばから離れていったとき、ふわっと独特な香りがした。


 あれ? この香り……。


 甘さの中に、スパイシーさが際立つ独特な薔薇の香り。

 あまり嗅いだことのない香りに、私はなぜか胸騒ぎがした。