「たまたま知り合った友達だって……そのあとすぐに低い声になって、『浮気疑ってんの?』って……久斗、私にあんな怖い声で話したことなかったのに……」


 ぽろぽろと、景子の涙は止まらない。

 その涙の分だけ私も苦しくなってくる。

 なんとかしてあげたい。

 でも、私が加藤くんに突撃しても悪化させるだけになりそうだし……。


「もしかしたら本当に浮気してて、バレそうだと思ってあんな怖い声したのかなって……うっふぅうっ……」


 そのまま景子はひたすら泣いて、もうまともに話せないみたいだった。

 私も、どうすれば良いのか分からなくて……とりあえず、このまま授業は受けられそうにない景子を保健室に連れて行くことしか出来なかった。

***

 景子に遅れて登校してきた加藤くんは、いつも通りの様子で「あれ? 景子は?」と私へ聞きに来た。

 彼が本当に浮気しているのかも分からない以上、景子が泣いていたことを話すとこじれそうだなと思って、私は「気分が悪いみたいで保健室で休んでる」とだけ伝えた。


「そっか、心配だな……後で様子見に行ってみるよ」

「あ、加藤くん」

「ん? なに?」


 思わず引き留めたけれど、私は彼になにを聞きたいんだろう。