「陽にはバレてないよね? ちょっとだし」


 呟きながら付けていたヘアピンを取り“黒髪のウィッグ”も取った。

 まとめていたものを全部取ると、長い桃色の髪がサラッと腰まで落ちる。

 珍しい桃色の髪。ストロベリーブロンドっていうんだって。

 私を捨てたお母さんが、この髪の色から名前を決めたって言ってたっけ。

 お母さんは嫌いだけれど、名前は気に入ってるから良いセンスしてるとは思う。


 とはいえ、この髪色のせいで昔人さらいに遭いかけた。

 たまたま近くにいた大人が気づいたおかげで大事にはならなかったけれど……。

 そのとき多くの大人から言われた『珍しい髪色だから狙われやすいんだろう』って言葉がずっと心に残ってる。

 だから私はこの髪を隠して地味でいることを選んだんだ。


 お義母さんや陽は家族だから、いつかはちゃんと話した方がいいかなって思うんだけど……。

 でも、心から信頼出来るかってなるとまだちょっと微妙だから、もう少しだけ様子見したい。

 そういうわけで、ちゃんと話せるまでは家でも隠し通すことにしてるんだ。

 お父さんは私の意思を尊重するって言ってたし。


「でもウィッグつけるにはもう少し髪の量は抑えたいんだよね。でも美容室行ったらバレちゃうし……」


 下手くそでも自分で切るべきか。と、鏡を見ながら私はしばらく考えていた。