惑わし総長の甘美な香りに溺れて

 強い力で引っ張られてこのまま捕まってしまうのかと絶望しかけた。

 けれど。


 ガッ

「うぐっ」

 ドンッ

「ぐあっ」


 二つの鈍い音と呻く声がしたと思ったら、次の瞬間には甘い薔薇の香りに包まれた。


「陽っ!?」

「ぅくっ」


 私を抱き締めた後、守るように前に立つ陽。

 でも、私を助けるために無茶をしたのか立っていられなかったみたい。

 そのまま床に膝をついてしまった。

 それでも、陽は甲野を睨み付ける。


「俺の光に触れんな」

「陽……」


 体を動かすのも辛い様子なのに、それでも私を守ろうとしてくれることが嬉しい。

 でも、苦しそうな陽を見るのも辛くて、ギュッと胸が締め付けられた。


「はっ! 光ときたか。お前がロマンチストだとは思わなかったぞ」


 とても面白そうに甲野は笑うけれど、冷たい目をして続ける。


「さて、その威勢もいつまで持つかな?」


 甲野の言うとおりだった。

 二人の手下たちは陽の攻撃で蹲ったけれど、ゆっくり立ち上がろうとしている。

 いくら陽が強くても、立つのも辛い状態でこの状況を脱するのは無理だ。

 どうしよう、と焦りながらも頭を巡らせていると――。