惑わし総長の甘美な香りに溺れて

 まずは道を塞いでいるこのSudRosaの人たちを突破しないと……。

 回り道するしかないのかな? と彼らの様子を伺っていると、さっき以上に大勢が声を上げ始めた。


「下部組織とか、俺らには関係ねぇ!」

「確かに陽さんは啼勾会の命令で俺たちをまとめ上げてSudRosaを作ったのかもしれねぇけどよ」

「でも、俺たちは陽さんが総長だから従ってたんだ! その陽さんを突き出すとかありえねぇだろ!?」


 みんなが叫ぶ言葉は陽を慕っているようなものばかり。

 前に見た集会のときは怖がられてるようにも見えたけれど、陽はこんなにSudRosaの人たちに慕われてたんだ。


「むしろなんで三川さんはそんな冷静にしてられるんだよ!? 陽さんが一番信頼してたの、三川さんじゃねぇか!?」

「っ! それは……」


 ずっと無表情だった笙さんの顔が歪む。

 後悔……ううん、自責の念に駆られているような苦しそうな顔に。


「三川さんだって陽さんのこと信頼してたんだろ? 昔なにがあったか知らねぇけどさ、後悔してんなら啼勾会に従う必要ねぇんじゃねぇのか?」

「そうだよ、三川さんも施設の認証登録してるんだろ? だったらむしろ助けに行くべきなんじゃねぇのか!?」

「っ!」


 笙さん、認証登録してるの?

 陽を助けるための光明が見えた気がした。

 私は覚悟を決めるためにバッグをギュッと掴んで、震えそうになる足を叱咤して動かす。

 大勢の男たちの近くに行って、叫んだ。