「これ、陽が放課後になったらあんたに渡してくれってさ」

「え?」


 渡されたのは封がされた質素な手紙。

 なんで手紙?

 スマホでメッセージ送れば早いのに。


「陽は? 陽はどこにいるの?」

「は? あいつは昼に早退したぜ? 義姉なのに知らねぇの?」

「え? なにそれ、知らないよ!?」


 早退するなんて聞いてない。

 昼食のときまではいつも通りだったのに、どうして私に黙って……。

 なんだか嫌な予感がして、私は陽の友達に問い質そうとする。


「じゃあ俺部活あるから!」


 でも声を上げる前に彼は走り去ってしまった。

 確かにサッカー部の練習ならもう始まってるだろうし、無理に引き留めても陽の居場所を知っているとは限らない。

 私は気を取り直して、さっき受け取った手紙の封を開けた。


【南香薔薇のことは俺の問題だから、やっぱり俺一人で行く。萌々香を危険にさらしたくないんだ。ごめん】


 しっかりと書かれた文字は陽の決意も表れているよう。

 私の心配をしてくれるのは嬉しいけれど……。


「約束したのに……やっぱり、一人で行くつもりだったんだ」


 悔しくて、ギュッと掴んだ紙にシワがつく。

 でも、もしかしたらこうなるかもしれないとは思ってた。

 約束をしたとき、陽はかなり迷っていたから。

 だから私は……。