惑わし総長の甘美な香りに溺れて

***

「お医者さんも問題ないだろうって。本当に良かったわ」

「まったく、大げさだって……」


 念のためにと、病院に行った陽たちが帰ってきたのは私が夕飯を作り終えた頃だった。

 ずっとニコニコしているお義母さんに、陽はいい加減うざったくなって来てるみたい。

 でも本気で嫌がってる感じでも無いから、照れ隠しなのかも。

 そう思うと、いつもと違ったかわいさがあるなぁ、なんてほのぼのとした。


 お義母さんから連絡をもらっていたらしいお父さんも今日は早めに帰ってきて、久しぶりにみんなで夕飯を囲む。

 お父さんも陽が記憶喪失だったことは知っていたみたい。

 陽が教えてくれなかったら、私だけが知らなかったってことだよね?

 それを不満として伝えたら「すまない、どう離せば良いかわからなかったんだ」と困らせてしまった。

 ずっと黙っているつもりだった訳じゃないみたいだし、謝ってもらったから許すことにした。

 そうして家族団らんの時間を過ごして、寝る前に陽に声を掛けられる。


「モモ、ちょっと部屋に行って良いか? 話があるんだ」

「あ、うん。いいよ」


 答えて部屋に招いてから、話ってもしかして保健室で言っていた『続き』のことかな? と思い出す。